『スペイン観光とスペイン情報』 2008号 11月
《特集:銀の道》 公式サイト:www.rutadelaplata.com 「銀の道」とはアンダルシア州を代表する都市セビーヤに始まり、イベリア半島を縦断してカンタブリア海に面した町、アストゥリアス州ヒホンで終る全長 816kmのローマ時代に造られた街道です。かつては、当時イベリア半島の ほぼ全域を支配していたローマ人の主要軍用道路として、また、スペイン北部で採掘された金・銀などの鉱物やワイン・農産物をローマへの玄関口であったセビーヤの港へ運ぶ交易道路として使用されました。ローマ帝国撤退後、 西ゴート、イスラム教徒の支配下に入った後も、この「銀の道」は主要幹線道路として残り、 現在、これらの民族が残した歴史的遺産を数多く目にする事が 出来る スペインの魅力溢れるルートの一つとなっています。また、このルートのおよそ3分の1を占めるエクストレマドゥーラ州は、訪れる人はまだ少ない 秘境の地ながら、ローマ遺跡が多く残る歴史芸術遺産の宝庫であり、グルメ ファンをうならせる食材も欠きません。ここでは、銀の道が通る町とパラドールをセットでご紹介します。 セビーヤ (Sevilla) スペイン屈指の観光地、アンダルシア州の玄関口 大聖堂、アルカーサル、インド古文書館の一画が世界遺産として有名なセビーヤ。セビーヤから「銀の道」沿いに8キロのサンティポンセ(Santiponce)の町には、イタリカのローマ遺跡があり、当時の円形劇場が残っています。ローマ遺跡は、「銀の道」から少し東に外れたところにあるカルモナ(Carmona)の町でも発見されています。カルモナの、かつての カスティーヤ王ドン・ペドロの宮殿であったアルカーサルは、現在パラドールとして人気を集めています。 メリダ(Merida) 数多くのローマ遺跡が残る世界遺産指定都市 『小ローマ』とも称されるこの町は紀元前25年ローマ帝国の属州ルシタニアの首都として建設されました。当時はトレドとリスボン、そしてサラマンカとセビーヤの両ルートの 接点として大いに栄えました。小ローマと呼ばれただけあり、ローマ時代の輝かしい 遺跡の数々は歴史の奥深さを物語っています。 6千人収容の劇場は、舞台の後方に 大理石の柱を神殿風に配置し、舞台に向かって半円形の客席が並ぶ豪壮なもの でした。今日ではここを会場に毎年夏に「メリダ古典演劇祭」が開かれています。他にも円形競技場やローマ橋などの古代遺跡群は、世界遺産に指定されています。 カセレス(Caceres) まるで中世にタイムトリップしたかのような風情ある世界遺産指定都市 中世の佇まいをそのままに残す城壁の町カセレス。古い街並みが多く残るスペインの真骨頂とでも言える、城壁に囲まれた旧市街は、1986年に世界遺産に登録され ました。点在する5〜16世紀の貴族の館のなかで、珍しい建造物としては、外壁に猿が 彫りこまれている「猿の家」があります(現在は図書館)。また、学生の街としても知られ、夏祭りや秋の音楽祭、中世演劇祭などは人気があります。 14世紀の宮殿を改装したパラドールは周囲の景観に溶け込んでいます。旧市街地の中心に位置するため、観光に便利です。 サラマンカ (Salamanca) 多くの留学生が学ぶ世界遺産指定都市 銀の道の主要都市であり、1218年に大学が創設され、以後ヨーロッパ屈指の大学のある 町として隅々にアカデミックな雰囲気が漂っています。旧市街地は世界遺産にも指定されており、スペイン・バロック建築の最高峰の一つであるマヨール広場をはじめ、大聖堂、貝の家は必見です。旧市街地の外の高台にあるパラドールの部屋の窓からは、トルメス川を挟んだ旧市街の街並みが一望でき、夜景は特にロマンチックです。 サモラ (Zamora) 町全体がロマネスク様式の博物館 城壁に囲まれた町で、16世紀のロマネスク様式宗教建築物や宮殿が多く 残っています。なかでも素晴らしいのは、伝統的なビサンチン様式の円屋根を持つ大聖堂です。 サモラから約25キロ西に行くと、そこは地場品種ティンタ・デ・トロ(テンプラニーリョ)のぶどうを使った濃厚な赤ワインで有名なDO(原産地呼称)トロの 産地で、多くのワイナリーがあります。 www.dotoro.es/jp (日本語) アストルガ (Astorga) ガウディの司教館(現在は巡礼者博物館)とチョコレート美術館のある町 レオンの近郊に位置するアストルガは、小さいながら、つい寄り道したくなる魅力が満載の町です。15世紀から20世紀にかけて建てられたサンタ・マリア大聖堂はファサードの彫刻が 見事で、その大きさに圧倒されます。また、ガウディが建てた司教館は、現在は巡礼者博物館になっており、一般公開されています。一見簡素な印象ですが、所々にガウディらしさが見られます。アストルガのチョコレート産業の歴史をまとめたチョコレート博物館もお見逃しなく。 レオン (Leon) 「サンティアゴ巡礼の道」と「銀の道」の交差点 古代ローマ軍が野営地を設置したのが起源となり、中世期にはレオン王国の首都として栄えたこの町には当時の面影が至るところに残っています。見どころは、ステンドグラスが美しい大聖堂とロマネスク時代の素晴らしい天井画が残るサン・イシドロ教会。また、カラフルでモダンな外観のカスティーヤ・イ・レオン現代美術館も、町の新しい名所です。 http://musac.es/ 街の北西の端には、サンティアゴ巡礼者の救護施設でもあった、かつてのサン・マルコス修道院があり、現在は、プラテレスコ様式が美しい5つ星のパラドールとして人気を集めています。 ヒホン (Gijon) 文化遺産と美しい自然の景観が融合する町 銀の道の最北端で最終地点。カンタブリア海が広がるアストゥリアス州の沿岸部中央に位置する美しい港湾都市。ローマ時代の史跡から近代建築まで豊富な建造物を見物するのも よし、ビーチでのんびりするのもよし。 パラドールはビーチにほど近いイサベル・ラ・カトリカ公園に位置し、古い水車小屋を改装したもので、緑と水の溢れるリラックスした空間です。 ◆ アクセス情報 ◆ セビーヤ:マドリッドからスペイン国鉄RENFEのAVEで約2時間半。 ヒホン:空路ではマドリッドのバラハス空港からアストゥリアス空港まで1時間。アストゥリアス空港からヒホン市内までは40km(タクシーで約45ユーロ)。陸路では、マドリッドからスペイン国鉄RENFEのALVIAで5時間強。または、ALSA社のバスで5時間半。 ◆ 知っ得グルメ情報 ◆ ●イベリコ豚の白い村 モネステリオ 銀の道セビーヤ〜メリダ間に位置するバダホス県のモネステリオ(Monesterio)の町は生ハムの生産地として有名です。16000haの“デエサ”と呼ばれる樫の木の原生林の中で放牧されて育ったイベリコ豚は地元の工場で生ハムや腸詰に加工されます。9月の第2土曜日には、「生ハムの日(El Dia del Jamon )」と称し、生ハムのカッティング・コンクールや試食会、ワークショップなど、生ハム関連の様々なイベントが開かれます。 <モネステリオ観光案内所> Tel: +34 924 51 67 37 /E-mail: oitmonesterio@gmail.com ※生ハム関連のイベント情報: www.jamondemonesterio.org (西語) ※モネステリオへのアクセス:セビーヤからLEDA社のバスが約2時間に1本運行。所要時間1時間強。 ●カサール・デ・カセレスの名物チーズ トルタ・デル・カサール カセレスの町から銀の道を17キロ北上すると、チーズの名産地、カサール・デ・カセレス(Casar de Caceres)に到着します。ここで是非試したいチーズがトルタ・デル・カサールです。日本語で“カサールのタルト”という意味のこの厚みのある丸型チーズは、上の表面部分を水平に切り抜き、蓋のように取り除くと、中から トロトロのチーズが現われます!これをスプーンですくってパンにつけて食すと 最高です。地元で育った羊の生乳を発酵させ、天然植物を凝固剤に使うという 独特な伝統手法で作られるナチュラルでコクのあるチーズです。 ※公式サイト www.tortadelcasar.org (英語) *********************************************************** 《バルセロナ県シッチェスで第1回ワイン・ツーリズム ワークショップ開催》 1ST WINE PLEASURES INTERNATIONAL WINE TOURISM CONFERENCE & WORKSHOP バルセロナ郊外の代表的なリゾート地、シッチェスで旅行業界関係者を対象にカタルーニャ州のワイン・ツーリズムを提案するワークショップが開催されます。当日は現地ツアーオペレーターとの商談も可能です。 開催日:2009年1月26日〜28日/開催地:Port Resort Sitges 問合せ:Wine Pleasures C/Vino y Sol, 1, 08779 La Llacuna (Barcelona) . Spain T. +34 93 897 70 48 URL: www.winepleasures.com/tourism/ *********************************************************** 《バルセロナ、「世界の住みたい都市」ベスト5入り》 バルセロナ市役所によると、世界中の1600人を対象にインターポールが世界の住みたい都市を調査したところ、ロンドン、パリ、シドニー、ニューヨークに続く5番目にバルセロナがランクインされました。全体的には、創作力に あふれ、温かみのある土地柄、人々の寛大さなどで高得点を獲得。特に、生活水準の高さ、建築、食事、その他にビーチを有する温暖な気候が評価されました。アンケートでは、13%の人がバルセロナに住んでみたいと答え、 再び観光でもバルセロナを訪れたいと回答したビジネスマンは78%にも上りました。 |
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